人に対して過度なマルチタスクを導入すると、人を壊すかもしれない −中編:マルチタスク継続期−

人に対して過度なマルチタスクを導入すると、人を壊すかもしれない −前編:マルチタスク黎明期−の続きです。
<<ダイジェスト>>
人に対して過度なマルチタスクを導入すると、どうなるかを、自己の事例を元に記述していくシリーズ。
まずは、マルチタスクのやり方から解説。

時間の節約のため、家事をターゲットに、マルチタスクを試みていた時期のことを振り返ってみる。
 1.洗濯機を回すのは20時まで
 2.食事を食べ始めるのは19時までに
という制約のもと、2つのタスクを同時に、かつ、時間通りに行動するためのスケジュール方法と、タイムキーピングのための手法について、例を挙げて解説。

前編では、どうやってマルチタスクを実行していたかを具体的に解説してみた。
今回は、このマルチタスクを実行しつづける際に必要な技量について、
徒然なるままに書いてみたいと思う。
# いきなり結論に持っていこうと思ったら、それは無理だと気が付いた…
# なんて、マヌケなことになっていたのはナイショにしておいてください。

マルチタスク用にスケジュールを立て、それを実行するために、
自分に課せられる「技量」がある。
それは、記憶能力割り込み処理に対する処理能力、そしてリスケジューリング(再計画)である。

◆記憶能力
まずは、とにもかくにも記憶能力は必要である。
記憶能力は、
 ・スケジュール
 ・どこまで自分が実行したのか

を覚えておくために必要である。

そして、リスケジューリングが必要になった場合、過去のスケジュールを消去し、
現在どこまで実行したのかをリスケ後のスケジュールにマッピングする能力もここに含む。

なぜ、スケジュールを自分で記憶しておく必要があるか。
それは、スケジュールを確認する作業というものは、
かなりの時間を潰す要因になるからである。

なぜ、どこまで自分で実行したのかを自分で記憶しておく必要があるか。
それは、実行した内容をチェックする作業というものも、
それなりに時間を潰す要因になるからである。

実際、紙にスケジュールを書き、
それに対してどこまで実行したかをチェックしていくとすると、
具体的には、こういうことが起こる。

 1) 紙を確認するタイミングは、行動ポイントごとに付く確率が高い
 2) 紙を確認する時間は、確認したい点の前後を見る時間も必ず含まれる
 3) 紙にチェックを記入するタイミングは、行動ポイントごとになる
 4) 紙にチェックを記入する時間は、チェックを入れる場所を探索する時間も含まれる


それぞれの時間は秒単位のほんのわずかなのかもしれないが、
すべて合算すると、それなりに時間がかかっているものだ。

そして、この確認やチェックをする時間というのは、
元のスケジュールには含まれていないため、
スケジュールの遅延などを起こさないためには、
確認やチェックの時間を極力取らない、あるいは、一切取らない
ことが望ましいといえる。
記憶しておくということは、脳に負担をかけることではあるが、
時間の節約としてはかなり理想的な方法なのだ。

もし、確認やチェックの時間を取るのであれば、
確認やチェックの時間も盛り込むようリスケジューリングする事をオススメする。

◆割り込み処理に対する処理能力
スケジュール以外の処理が入らない、などのような理想的な環境であればよいが、
実際はそうはいかない。
 ・訪問者関係
 ・子供の相手
 ・電話対応

のような、ランダムな割り込みがはいることは考慮しておかねばならない。

さらに、余分なタイムロスを防ぐために、
スケジュールに沿って、ランダムな割り込みの種類によってどう対応するか
をあらかじめシミュレーションしておく必要がある。

例えば、訪問者関係。
訪問者関係は、大きく2種類に分けることができる。
 ・歓迎してよい訪問者
 ・歓迎したくない訪問者

前者は、宅配や集金などが相当する。
後者は、訪問販売や勧誘員などが相当する。

前者の宅配を例にシミュレートしてみると、
 1) ピンポーン (インターホンがなる)
 2) インターホンに応答 (5秒程度)
 3) はんこを持って玄関へ (はんこの位置と現在地との関係によりかかる時間が変わる)
 4) 荷物受け取り応答 (1分程度)
 5) 元の位置に戻る

の順で、こなせばよい。

それぞれのポイントでの対応時台詞も、標準化しておくと、
考えなくてよいので楽だ。
例えば、インターほんの対応などは「はい」「お待ちください」の2点セットでよい。

 (ピンポーン)
 私 「はい」
 相手「宅配便でーす。○○からのお届けです」
 私 「お待ちください」

また、はんこのセッティング位置は、玄関のすぐ近くなど、
余分な導線を取らない位置に決めておくと、
スムーズにことは運ぶ。

後者の訪問販売を例にシミュレートすると、
 1) ピンポーン(インターホンがなる)
 2) インターホン応答

これだけで終わらせるように持っていくようにスケジュールを立て、
そのスケジュール通り終わらせるには、インターホン応答に工夫をする。
# 工夫というまでもないけど…。

 (ピンポーン)
 私 「はい」
 相手「私、このへんで○○をやっている…」
 私 (話をさえぎり)「ご用件は?」
 相手「あ、すみません。○○について…」
 私 (キーワードが聞こえた時点で)「結構です」
 (がちゃんw)

ともかく、早急に用件を聞き出し、用件のキーワードが見えた時点で断り、
即、インターホンを切る。
新聞屋の場合、「○○新聞ですが…」とはじめの時点で切り出してくれることが多いので、
その時点で、即「結構です」が言えるので楽だ。(^^;)

と、このように、思いつく限りの事象について、時間のロスを最小限にするようシミュレートしておく。
優先順位の基本は、マルチタスクを実行している「スケジュール」なのだから。

本番は、そのシミュレートどおりに行動すればよい。
大概、うまくいくし、うまくいかなければシミュレートしなおせばよい。

ただ、シミュレートしなければならない事項はかなり多く、
一つの事項に対していくつかのパターンを用意しておかなければならない。
場合によっては、シミュレート対象の事項を減らす努力もしなければならなくなる。
# 例えば、契約している新聞社にお願いして、
# 他の新聞の勧誘がこないようお願いするとか…。

余談。
一番困った事象は、これだったりするのだが…。(^^;)
こうなると、腹を括ってキッチンタイマー、火の元を消して、
事後処理にいそしむのです。

◆リスケジューリング(再計画)
要は、計画の練り直しである。
計画を練り直さなければならない時期というのは2種類ある。
 ・割り込み処理が入った場合
 ・料理の種類が変わった場合

前者は、その場で早急に行わねばならないリスケジューリング、
後者は、毎日、献立が決まったら行うスケジューリングである。

前者は、先ほどの割り込みが入ったときに、行う必要が出てくる可能性がある。
割り込みの内容によっては、リスケが必要でない場合もあるが、
さすがに痛い話臭い話になった場合には、
キッチンタイマーや火の元を閉めるようなスケジュール外の行動が必要になり、
リスケが必要になる。

スケジュール実行中にリスケをする必要があると、優先順位を変更するなどして、
瞬時に元の目的を遂行するになるべく近い状況になるよう、
脳内で組換えを行う。
場合によっては、リスケしながら、作業を行うこともザラにある。
場合によっては、スケジュール内容をごっそり捨て去り、
全く違うスケジュールを立てるだけの切り替えも必要になる。
リスケジューリングは、比較的コストの高い作業である。

後者は、いつ献立を決めるかによって、スケジューリングするタイミングが変わる。
前者に比べると非常にゆったりしているように見えるが、
献立を立てるタイミングが帰宅時の買い物時であった場合、
買い物時間が長くなると、帰宅してからのスケジューリングが大変になるため、
かなり焦る状況下で献立を考えつつ、スケジューリングしなければならなくなる。
…献立を考える時間は気をつけないと、
全体を見通した場合に以外にコスト高なのである。

【中編の結び】
今回は、マルチタスクを実行するのに、必要な技量の紹介をした。
 ・記憶能力
 ・割り込み処理に対する処理能力
 ・リスケジューリング(再計画)
それぞれ、比較的、自己に負荷のかかりやすい作業だということが、
おわかりいただければ幸いである。

これらの技量なくしては、マルチタスクはなりえないが、
これらの技量を維持するための、もう一つの大切な技量がある。
次回は多分最終回の予定なのだが、その大切な技量について解説したいと思う。
…って、長すぎだから。(>_<) >CAMUS

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